英国モラトリアム録

ロンドン南東在住の妙齢による日々思うところの記録。音楽/映画/ミュージカル/アニメ/料理など

紅茶のお供・ウェルシュケーキ

今日は休みだし天気もいいし出かけたかったのに、逃したくないデリバリーが届くのがわかっていたので家に留まることに。しかしそういうものに限ってなかなか届かない。もう6時半ですよ?ホントにこれから来るの?

そんなわけで暇を持て余していろいろ料理してました。本日のプディング(イギリスではデザート全般のことを「プディング」といいます)は、ウェルシュケーキ。カーディフのマーケットで山積みに売られてるのを食べて以来、素朴な味で結構気に入ってましたが、自分で作ったのは今回が初めてでした。

f:id:n0ck0:20160505023302j:plain

味やテクスチャーはスコーンとショートブレッドの間ぐらいで、こちらでは定番の紅茶のお供のひとつ。オーブンでなくフライパンで焼くので、簡単かつ失敗が少ないと思う。レシピでは中火で3分ずつ、とあるけど、熱くなりすぎちゃうとすぐ焦げ目がついてしまうので、こんがりゴールデンな焼き色にするには弱火でじっくり両面焼くのがいいと思います。2回めでやっとコツつかんだけど、最初のやつは黒くなりすぎましたね。

参考にしたレシピはBBC Good foodのこちら。このサイトなかなかよいレシピがあります。そろそろ旬なので、今度はルバーブカスタードタルトなど作ってみようかなと思ってます。なお、レシピではカランツになってますが、近くのスーパーに売ってなかったのでサルタナで代用。ラードもないので全部バターで。砂糖は多すぎるとふんで60gぐらいに減らしました。案の定ちょうどよかったです。「参考にした」なんて言っておきながらレシピあれこれ勝手にいじりすぎ。まあ美味しかったからいいではないか。

一人ではとても食べきれないので写真の山盛りのポーションそのままハウスメイトたちにオファーしました。さて売れ行きはいかがかしら?

 

鶏ハム有効活用レシピ(タリアテッレ編)

忙しい週に突入する前に、サンドイッチの具用に必ず作っておく鶏ハム。黒胡椒まぶしたのとHerbs de Provence(プロヴァンスのハーブミックス。入れるハーブで迷ったときは大抵これ使うと美味しい)まぶしたのの2種類作ってます。 で、使い切らないまま週末に突入しそうだったので、いろいろなサイトを比較しながらうまく消費できる有効活用レシピを考案してみました。

f:id:n0ck0:20160430001844j:plain

鶏ハムとマッシュルームのクリーミータリアテッレ(1人分)

材料

オリーブオイル 大さじ2杯

にんにく 1片

ベーコン 1枚(イギリスのなら半分でOK、Unsmoked streaky rashersがベター)

玉ねぎ  小さいの半分

マッシュルーム  3つ

鶏ハム 好きなだけ

白ワイン 少々

チキンストック ほんの少し(1ストックの4分の1程度)

生クリーム  カップ半分

アスパラガス  3本ぐらい

タリアテッレ  1人分(乾燥の丸まってるやつで3つ分ぐらい)

黒胡椒、パルメザンチーズ 少々

--

材料列挙する時点で適当さが如実に浮き彫りになってる。レシピ作成向いてないな…。

 

手順

1. オリーブオイルをフライパンに熱して、小さく切ってつぶしたにんにくと細切れにしたベーコンを弱火でじっくり炒める。

2. にんにくがきつね色に、ベーコンがカリッとしてきたあたりで、みじん切りにした玉ねぎと薄切りにしたマッシュルーム、一口大に切った鶏ハムを投入。白ワインを加えて、全体的にしんなりするまで中火で8分ぐらい炒める。※ベーコン、および鶏ハムに塩気が入ってるので塩は一切入れません。ハーブも鶏ハムについてるのがいい味出してくれるので基本入れませんが、プレーンな鶏ハムを使う場合はHerbs de Provenceやオレガノあたりを少々入れるとよいと思います。入れる場合はここで。

3. チキンストックと水カップ半分程度をフライパンに混ぜ入れて、沸騰させる。味を凝縮させるように中火で少し煮詰める。水分が半分以下になるぐらいまで10分程度ぶくぶく。

4. 別鍋でタリアテッレを茹で始めつつ、フライパンにアスパラガスと生クリームを混ぜ入れて、5-6分ほどソースがこってりするまで中弱火で煮る。

5. 茹で上がったタリアテッレをフライパンに入れて絡める。黒胡椒でシーズニング。ソースがもったりしすぎた場合は茹で汁で少しのばすといいです。トッピングにお好みでさらに黒胡椒とパルメザンチーズを削ってどうぞ。

 

レシピによってはチキンストックをもっと使っているものもありますが、あんまり入れすぎるとその味しかしなくなっちゃうしベーコンも入っているのでこれぐらいでいいかと。仕上げにちょっとだけレモンを絞っても美味しいかもしれない。白ワインが進むこってりソースです。寒い日におすすめ! 

2016年春アニメ その1

現時点で追いかけてるものについての感想をざっくり残しておきたいと思います。週末オンエアのものが多いので土日が忙しい!

f:id:n0ck0:20160425064313j:plain

甲鉄城のカバネリ

作画すごくない?オープニングエンディングも毎回変わるらしく、OVAか劇場レベルかってくらいの気合の入りっぷり。ストーリー展開も、よくあるパターンだし、ほぼ同じスタッフがやってる「進撃の巨人」を彷彿とさせざるを得ないようなものとはいえ、今のところ心つかむには十分な面白さ。無名ちゃんかわいいし強いけど「あたし何にも縛られないエキセントリックちゃんなの」アピールが鼻について笑っちゃう。これはDVD欲しくなっちゃいそう。原作なしオリジナルでここまでやれるのはすごい。

ジョジョの奇妙な冒険 第4部「ダイヤモンドは砕けない」

4部初のアニメ化!日常っぽいオープニング(OAされてる歌詞だけで「日常」が2回登場してるぐらい)もいいし、エンディングにSavege Gardenを起用してくれたスタッフに超グッジョブと言いたい。高木さんの億泰、ハマりすぎてて大好き。梶くんの康一くんもしっくりきてると思います。オープニングにシルエットで(おそらくほぼ)全キャラ出してきてるけど、どんなペースでどこまでやってくれるのか見届けたいところ。

僕のヒーローアカデミア

「努力・友情・勝利」を絵に描いたようなジャンプの王道だけど、毎回滾らせてもらってます。シンプルなのに面白くさせるっていう、簡単に見えて一番難しいことをやってるところがすごい!セリフや見せ場の作り方が上手なんだろうな。デクがピュアすぎて応援したくなっちゃう。原作読んでないので今後の展開に純粋にワクワクしたい。

ジョーカーゲーム

タイトルからライアーゲーム的なのを勝手に想像してましたが全然もっとイケてました。第二次世界大戦直前に暗躍した日本のスパイたちのお話。史実と絡めてきてるので敵か味方か、の騙し合いになったときの緊張感が半端じゃない!イントロダクション部分で、スパイ養成学校D機関での主人公たち8人が描写されたときは「キャラデザインも似てるし名前そんなに一度に言われても覚えられるか!」と思ったけど、今後は1話完結式で世界各地にちらばる彼らひとりひとりに焦点があたっていく様子。それぞれが敵味方になるような状況もあるのかな?最後、俯瞰して見たときにつながるであろうストーリーに期待!

迷家 ーマヨイガー

面白いような面白くないような…。共感できないようなろくでもない奴らを登場人物に集めて、あーでもないこーでもないとなかなか進まない展開を見せることで、視聴者を敢えてイライラさせるように作ってるような気がする。誰か死にそうなのになかなか誰も死なない!ってもやもやしながら毎週見てます。ダークホース的な感じかなあ。

Re: ゼロから始まる異世界生活

ラノベ原作だなあ、って感じのアニメ。ストーリーは面白いんだけどなあ。まず、セリフが練られてないのがどうも…。少ないセリフを核に、展開を、そして読者を動かすってすごいことなんだなと改めて思わされる。セリフといえば、主人公の視点がメタすぎてイラっとしちゃう。あと萌え要素が強めなところに少し拒否反応も。ストーリーは面白いんだけど。

坂本ですが?/逆転裁判/とんかつDJアゲ太郎

息抜きのオアシス、コメディ枠。「坂本ですが?」はやはりどうしても坂本くんの必殺技コールで吹いてしまう。「逆転裁判」は「坂本ですが?」とは別の意味でツッコミが必要なアニメ。そんな裁判あるわけないだろうが!って(ひとりで)言いながら見るのが楽しい。「とんかつDJアゲ太郎」は、アンダーグランドなジャンルながら地味にジャンプ的展開してるのが面白い。そして毎回見たあととんかつ食べたくなる。 

London Loop - section 2

London Loopっていうウォークを地味にやってます。

London Loopとは、全長240kmある、ロンドン郊外のウォーキングルート。緑が多いところ、川のそば、歴史的な建物があるところなどを中心にルートが組まれていて、比較的高低差もなくフラットで歩きやすいです。

全部で24セクションあって、1セクションのウォーク自体は10km前後(私の非常に遅い足でも休憩入れて4時間ぐらい)で終わるライトなもの。全部コンプリートすると「Loop」の名のとおりロンドン郊外をぐるっと1周したことになる、というしくみです。終わったら達成感あるだろうなあ。あと22セクションも残ってるけど。

カントリーサイドウォークはイギリスの醍醐味

ウォーキングのルートがわかりやすく整えられてるのはイギリスのいいところの一つだと思う。郊外に行けば必ずと言っていいほどpublic footpath(自治体などによって整備されてるウォーキングルート)があって、地図持っていかなくても要所要所に目印がついてるのでほぼ迷わず終点までたどり着ける。いや、でも「ここは目印必要だろ!」ってところになかったりするのがイギリスらしいとこなので、地図は間違いなく持って行ったほうがいいと思います。

今回のLondon Loop section 2は住んでいるところから電車で1時間もかからないような場所なのに、ほんとに静かで緑いっぱい、動物いっぱいのいいルートでした。 

f:id:n0ck0:20160425040035j:plain

ブルーベルも満開。

 

f:id:n0ck0:20160425040047j:plain

ベイビーラビットも発見。

他にも馬、キツネ、でかいインコ(もともといたわけじゃないけど逃げ出したのが大量に増えた)、白サギなどいろんな鳥、マス(動物っていうか魚ですが)なども発見。こんなにいいルートがわりと初期段階で出ちゃって、今後右肩下がりにならないといいのだが。

 

 

 

アメリカンなオーケストラの夕べ

Barbican CentreであったBBC Symphony Orchestraのコンサートに行ってきました。テーマは「アメリカ」。米国人作曲家に加えて、彼らの影響を大きく受けた作曲家の代表作が演奏されるというキュレーションでした。

Christopher Rouse  Rapture 

Maurice Ravel  Piano concerto in G major

www.youtube.com

Bryce Dessner  Quilting (UK premier)

Leonard Bernstein West Side Story - Symphonic Dances

www.youtube.com

 俺特なお得ラインナップ  

ラヴェルのピアノコンツェルトGメジャーは去年のBBC Promsでも聴いたけれど、とにかく大好き!ジャズの節回しがそこかしこに見られるのもそうだけど、カラフルで動きがたくさんあって、楽器それぞれの響きのおもしろさを引き出してるように聴こえるところがエキサイティング。2楽章めの美しさと1楽章&3楽章めの快活っぷりが対照的なところもいい。

ブライス・デスナーはあのインディ・ロックバンドThe Nationalのギタリストで、ソロ活動としてオーケストラや映画の楽曲も手がけてるそうで。最近は坂本龍一と一緒に「レヴェナント」のサウンドトラック作ってました。そういう人他にもいたなあ、あ、Radioheadのジョニー・グリーンウッドだ、と思ったら案の定、そのふたりの名前で一緒にアルバム出してた。共作ではなくそれぞれの作品の寄せ集めだけど。

脱線しましたがそんな彼の作品はまさにいい意味で上等な映画音楽のようでした。静と動で展開がきれいに作られていて、動の部分での観客を引き込む力がすごい!同じフレーズが繰り返されつつ少しずついろんな楽器が重なっていく場面でアドレナリン大量に出た!ちなみに彼、近くに彼女と座ってました。悪口言ったりしてなくてよかった。

ウエストサイド・ストーリーのシンフォニック・ダンスは初めて生で聴きましたがほぼフルオーケストラでジャズドラムもあったりして音の迫力がすごい。出だしの指パッチン(弦楽器の人たちは左手でやってたけど結構難易度高いのでは?)とか、「マンボ!」の掛け声とか、普段見ないようなおもしろ要素も詰まっててとにかくワクワクしっぱなしだった。

とまあもうありがたいことに全部楽しませていただきました。最後3つのインパクトがすごくてクリストファー・ラウスのどんなだったか忘れちゃった。ラウスごめん。 

「らしくなさ」があるほうが好き

クラシック、やっぱりバロックや古典よりもロマン派や比較的新しいもののほうが私には合ってるようで。ガーシュウィンみたいなジャズの影響を受けてるもの、ラフマニノフなどの近代ロシアのドラマチックなもの、あとはスティーヴ・ライヒみたいな完全なコンテンポラリーなものとか。キャラクターがあってとっつきやすさを感じるから。バッハやベートーヴェン、モーツァルトとかは完成されすぎててスノッブな感じがしてしまうというか。いや、好みの問題だけでなく、ただ私が無知なだけで、演奏者の立場になったりさらに詳しくなったりしたら、「何これ完璧じゃん!」ってアプリシエートせざるを得ないのかもしれないけど。

ちなみに今年のBBC Promsはガーシュウィンの日とチャイコ&ラフマ&プロコフィエフのロシアデーに行く予定です。あとチケットが取れたらライヒも。チャリで10分、普段の遊び場ペッカムにPromsが来るなんて誇らしいわ!

まるで上質の小説を読んでいるよう(昭和元禄落語心中)

f:id:n0ck0:20160402030356j:plain

本日最終回でしたね。2期制作決定万歳!

アニメファンと自称できるほど多くを追いかけてるわけではないけど、ハマったものはとことん追うタイプです。そんなわけであまりリアルタイムでチェックするタイトルも多くないんですが、こちらは例外でした。大変面白かった。

伝統芸で表現する伝統芸

まず、題材である落語でがっつり勝負しているところが素晴らしい。1話20分強ぐらいという尺のなかで、その4分の1にあたる5分ほどをまるまる落語1ネタに使ってくる心意気といったら!もちろんそれは声優陣の持っている魅せる力あってのもの。助六(CV:山寺宏一)のぐいぐい持っていくようなエキサイティングな落語、それとは対照的な菊比古(CV:石田彰)の艶っぽく影のある美しい落語。どっちもただ喋ってるだけなのに全く目が離せない。

背景の描き込みや色使いもため息が出るほど綺麗(一番のお気に入りはほおずき市の様子、あれは別格だった)。過去編の舞台である太平洋戦争ごろ〜昭和30年代ごろの日本の暮らしぶりを垣間見れるのも興味深かった。声しかり画しかり、これまでのアニメ史のなかで培われた良きところ、すなわち「伝統」の総動員をもってして、「伝統芸能」という落語を表現している、というなんとも粋な構図であったと私は思います。

じっくり味わう人間模様

要は落語をめぐる人たちの生き方を描いたストーリーなんだけど、登場人物はあまり多くない。そのうえ、モノローグがあるのは菊比古だけ。なので、助六やみよ吉(CV:林原めぐみ)の思うところはこちらが推し量るしかないんです。噺家さんたちの話なのに、彼らの心のうちとなると(菊比古を除いて)直接的な描写が極端に少ない。

アニメというのは尺の短さもあって、記号的にわかりやすく、テンポよく作られることが多いと思うけど、これはちゃんと「間」だったり、情景だったり、セリフの行間を読んで味わうことがよしとされる大人向けのつくりだと思います。だからまるで小説を読んでるような気分になったりした。

話の内容は八雲(菊比古の襲名後の名)による過去回想編が主なんですが、メインストーリーの時間軸における人物関係や事実・設定を考慮すると、だいたいその回想のなかでどういうことが起こって結末はどうなるのか予想はできてしまう。それでも惹き込ませてくれるんだから大したもんです。

 

落語って面白いねぇ。話の展開自体のおもしろおかしさ、もあるけど、それを通じて描かれる当時の人々の生活や風俗が生き生きとしているのがいい。次回日本に一時帰国するときはぜひ寄席に行ってみたいなぁ。末広亭は何度も前通ったのに、その周りの飲み屋にばっかり吸い込まれちゃってたわ。 助六的な生き方してるわぁ。

 

 

自由は犠牲を伴うもの(ペルセポリス/2007年)

f:id:n0ck0:20160330082832j:plain

「ペルセポリス」はイラン人女性であるマルジャン・サトラピの自伝的グラフィックノベルを原作としたアニメーションフィルム。ちょうどイラン革命、イラン・イラク戦争など国が政治的に大きく変動していた時期に少女〜青春時代を過ごした女の子の話です。

全体のトーンの不思議な明るさ

そんな時代背景なのに、どこかドライで淡々としているところがこの映画の魅力のひとつだろう。アニメーション、白黒、物語のテンポのよさによって「フィクション性」が強調されているからというだけでなく、主人公マルジャンのからっとした性格や語り口によるという理由も大きいんだと思う。

政治が揺れ動く中でコミュニストの叔父さんが収監されて殺されたり、友人が戦場で足を失ったり、イスラムの教えのもと女性であるという理由だけで不本意な扱いを受けたり、と、ティーンエイジャーの少女が経験するにはあまりに不条理なことがたくさん起こるのだけど、上述の要素によってこうした悲劇のウェットさが相殺されていて、奇妙な面白さがある。

正直、次から次へジェットコースターのように起こるばかげた出来事や不幸を笑い飛ばせるようなユーモアや、理解に苦しむような慣習に逆らっていくガッツを持った彼女を主人公とした視点でなければ、最後まで気楽に観れたかどうか疑問だろう。そういったイランの重い歴史、そして、そこで生きてきた人たちの実際をより多くの人に敷居低く届ける、という意味では、「アニメーション」という手法で世に出したというのはある意味すごく正解なのかもしれない。

故郷を離れて暮らすということ

最もあるあるだったのが、マルジャンがウィーンに留学中(といってもほぼ弾圧から彼女を逃すための亡命的な要素が強いものだったけど)のクリスマスの出来事。ヨーロッパ出身の友達はみんな家族とどうクリスマスを過ごすか話し合ってるけど、マルジャンには行くところがない。馴染んでいたと思っていても、そういうところで改めて感じさせられる移民としての自分。

また、常にマルジャンのインスピレーションだったおばあちゃん。確か彼女(あるいはマルジャンだったか)が物語の最後で言うこのセリフも、ものすごく心に突き刺さるものがあった。

「自由は犠牲を伴うもの。」

これはマルジャンが、ふたたびパリに旅立つことを決めたことで、ある大事な機会を失った際に言う言葉なんだけど、これがもう海外暮らしの自分に響いて響いて。

自分が自由でいられる、と感じられる場所が、必ずしも自分の大事な人にとってそういう場所であるとは限らない。自由を選んで、大事な人と離れて暮らす選択をする場合、彼らと一緒に過ごす時間を犠牲にしなければいけない。何が一番辛いかって、いや別に今現在辛いというわけではないんだけど、もし何かすごく後悔する出来事が起こったとしても、それが自分のした選択によるものだっていうところ。ロンドン住み始めて最初はそんな風に思うこと少なかったけど、長く暮らせば暮らすほどそういう気持ちが強くなってきてる気がします。